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あなたは人材や情報を探し求めていますか? 〜人事にとっての握髪吐哺

今回は、まずはある故事の話をしたいと思います。

中国の周(およそ紀元前1046年頃 - 紀元前256に成立した国)に

周公旦という人物がいました。

周朝の創始者の武王の弟として、創業に功があった人物です。

孔子が夢に出てくるぐらい、強く尊崇していたことでも有名です。

 

彼にはこんな話が伝わっています。

 

彼の屋敷に人が尋ねてくると、

周公旦は

入浴中であれば、髪を握って

食事中であれば口の中の物を吐いて、

その人と会ったそうです。

 

それは、なぜか??

 

その人が賢人だったら?

その人がもたらす情報が組織の命運を決めるものだったら?

と思うから。

そして、そのような姿勢によって、

より多くの賢人や情報が集まってくるだろうから。

 

この故事は「握髪吐哺」という成句になっています。

  

どのような人材を集めるのか?

どんな情報を持っているのか?

は、経営にとって死活的に重要です。

  

将棋を例に取りましょう。

将棋をする際に、飛車と角行がなかったらどうでしょう?

おまけに桂馬や香車がなかったら?

ルールを知らなかったら?

定石を知らなかったら?

序盤に布石をしなかったら?

将棋に勝てるでしょうか。

 

これを人事に敷衍すると

人材を求めること、集めること

情報を集めること

このことに企業の人事は

どれほどの意欲と熱量を持っているでしょうか。

 

また、会社経営者の知り合いは、

居酒屋で

「気持ちの良い接客をする店員」「動きが機敏な店員」「目端の効く店員」

がいると声をかけて、自社のことを簡単に説明して名刺を渡し、

「うちの面接を受けない?受けるつもりなら連絡して」と誘って、

1000円札を渡して、

「交通費に使って。もし来なかったとしても、差し上げますよ」

と伝えるそうです。

理由は

「優れた人材は一人でも欲しいから」

「埋もれている人材は世の中にいっぱいいるから」

だそうです。

 

とある友人は博学ですし、経験豊富ですが、

それでもとにかくいろんな場所に行き、

人と話すことを習慣化しています。

しかもお金をかなり使って。

それだけでなく、些細なことにも興味を持っています。

例えば、タクシーに乗りますよね、

そうすると、タクシー運転手に景気のこととか、

どの時間帯が混むかとか、どんな人が長距離乗るのか、

と言ったことを自然と聞きます。

訳を聞くと、

「その人の経験はできない、

だけど、その人の経験を聞くことで世の中のことが

少しだけど多面的に見える」

と言っていました。

  

これを聞いて、あなたは何を思われたでしょうか。

人に関わる仕事をしていて、多くの企業に訪問します。

その時に、

「検索したらわかるのに・・・」

「書籍を読めばわかるのに・・・」

「専門家にもっと早く聞けばいいのに・・・」

「他の人にも聞いてみれば良いのに・・・」

「セミナーやワークショップとか行けばいいのに・・・」

と思うことが多くあります。

 

経営において人事に携わる中で、

もっと人材や情報を求めて欲しいと思います。

経営を人事面からサポートするポジションとして、

人材や情報を貪欲に求めないことは

犯罪に近いと確信しています。

  

殷の湯王は伊尹を得て、夏の桀王に代わって天下を治めました。

伊尹は元々一介の料理人に過ぎませんでした。

周の文王武王は太公望呂尚を得て、殷の紂王に代わって天下を治めました。

呂尚は元々屠殺人だったという説もあります。

 

逆に

戦国期の魏は

「呉起」「商鞅」「范雎」が生まれながら、活用できずに、

みすみす他国に逃して、天下を失いました。

 

このように、

一人の人間や1つの情報が

組織の盛衰を決めることは歴史を紐解けば数多くあります。

 

目の前の人間が組織を発展してくれるかもしれない。

目の前の人間が組織を滅ぼすかもしれない。

という相反する問いを持って臨むべきです

 

組織の盛衰に関わる仕事をしているという

自負と責任感を持って、

人材と情報を探し求めましょう。

 

最後に豊田佐吉翁の有名な言葉で終わりにしたいと思います。

「障子を開けてみよ、外は広いぞ」